【完全ガイド】障害者手帳を転職で活かす方法｜働き方・制度・交渉のコツまで

障害者手帳は「就職に不利」ではなく「働きやすくするための武器」。正しい活用法を知ろう

転職や就職を考えている方の中には、「障害者手帳を出すことで不利にならないか」と不安に思う方も多いかもしれません。しかし実際には、障害者手帳は就職の場面で不利になるものではなく、「自分らしく働くための武器」として活用できる大切な制度です。特に精神障害や発達障害のある方にとっては、職場で必要な配慮を受けるための根拠となり、就職後の安心につながる要素でもあります。

障害者手帳があることで、障害者雇用枠での応募が可能になり、あらかじめ配慮のある前提での面接や採用が行われます。また、企業側も法定雇用率を満たす必要があるため、障害者手帳を持つ求職者を積極的に受け入れる体制を整えている企業が増えているのも事実です。さらに、dodaチャレンジやatGPなどの専門エージェントでは、手帳のある方に向けた求人情報の提供や、職場との調整、面接時のサポートも行っています。

大切なのは、「いつ」「どのように」障害者手帳を活用するかという視点です。不安を感じるからといって隠すのではなく、働きやすさを自分で選ぶ手段として、正しく使うことがこれからの就職活動には求められています。

そもそも障害者手帳って転職活動でどう使えるの？

障害者手帳の活用には、就職活動の中で「どのタイミングで提示するか」「何を目的に使うか」といった戦略的な考え方が求められます。手帳を持っているからといって、すべての場面でそれを提示しなければならないわけではなく、活用の仕方は状況や目的によって異なります。

応募時に使う？入社後？タイミングで変わる使い方

障害者手帳の使い方は、「応募時に提示する」場合と、「入社後に提示する」場合で大きく異なります。応募時に提示する最大のメリットは、障害者雇用枠の求人に応募できる点です。この枠では、企業側も障害特性への理解や配慮を前提として採用活動を行っており、自分に合った職場環境を見つけやすいという利点があります。精神障害や発達障害に対しても理解がある職場で、無理なく働ける可能性が高まります。

一方、一般枠で応募して採用された後に手帳を提示する場合は、入社後の業務や環境を見た上で配慮を求めることができます。ただし、このタイミングでの提示には注意も必要です。入社時に配慮がなかった分、後から調整する際に「最初に言ってほしかった」と誤解を受ける可能性もあるため、職場との信頼関係やコミュニケーションの取り方が重要になります。

障害者手帳を使うタイミングによる活用法の違い

応募時に障害者手帳を提示する場合、障害者雇用枠での就職活動が可能になります。これは、企業が障害者雇用促進法に基づいて法定雇用率を満たすための取り組みをしている枠であり、配慮を前提とした採用となるのが特徴です。求人票にも「通院配慮あり」「業務内容調整可能」などの記載があることが多く、自分の特性に合った働き方がしやすくなります。たとえば、atGPやdodaチャレンジでは、事前に企業と相談したうえで利用者に合った求人を提案してもらえるため、手帳の提示がむしろプラスに働くこともあります。

一方、入社後に手帳を提示するケースでは、すでに任されている業務や配属先との調整が必要になるため、会社側の対応によっては変更が難しい場合もあります。特に配慮を必要とする業務内容や勤務時間の変更を求める際は、あらかじめ調整のしやすい職場体制が整っているかどうかを見極める必要があります。

就労移行支援事業所では、こうしたタイミングや使い方について、支援員が一緒に考えてくれるため、不安がある場合は早めに相談することが重要です。manabyやキズキビジネスカレッジなどでは、手帳の活用に関する講座や模擬面談も行われており、「どう伝えれば自分の意図が伝わるか」を練習できる場も整っています。

障害者手帳は、自分にとって働きやすい環境を選ぶための“パスポート”のような存在です。どのタイミングで、どのように提示するかを自分なりに整理し、「活かせる形」で使うことが、転職活動成功のカギになります。

タイミング	メリット	デメリット	向いている人	注意点
応募時	障害者枠求人が選べる／配慮の提示がしやすい	応募段階で障害が開示される	継続的な配慮が必要な人	面接での説明準備が必須
内定後（入社前）	条件交渉や配慮の確認がしやすい	企業によっては理解が浅い場合も	環境次第で伝えたい人	書面での合意を取りたい
入社後	自分のペースで様子を見ながら開示できる	配慮が受けられない期間が発生	徐々に慣れたい人／体調安定後に開示	職場との信頼構築が前提

書類提出の有無／求人選定の基準としての役割

障害者手帳を活用して転職活動を行う際には、「書類提出のタイミング」と「求人選定の判断材料」としての役割を正しく理解しておくことが重要です。まず、書類の提出については、障害者雇用枠で応募する場合、精神障害者保健福祉手帳のコピーを企業に提出するよう求められることがあります。これは、障害者雇用制度に基づいて法定雇用率の対象者としてカウントされるためであり、企業側にとっても正式な手続き上必要な情報となります。

一方で、選考初期の段階では手帳の提示が不要な場合もあり、面接や内定後に提出を求められるケースも存在します。そのため、「いつ提出するのか」「誰に渡すのか」「どう説明するか」は、応募前にエージェントや支援機関とすり合わせておくことが大切です。特に、dodaチャレンジやatGPのような障害者雇用専門エージェントでは、書類提出のタイミングや内容について丁寧なサポートが行われており、安心して活動を進めることができます。

また、障害者手帳は「求人選定の基準」としても機能します。たとえば、通院配慮が必要であれば「通院時間の柔軟な調整が可能な企業」、感覚過敏の傾向があれば「静かな職場環境を整えている企業」など、配慮内容に応じて応募先を選ぶことができます。就労移行支援事業所やエージェントは、こうした配慮の実績がある企業を把握していることが多いため、手帳を活用する前提で相談することで、希望に合った求人と出会いやすくなります。

障害者手帳は、ただの“証明書”ではなく、自分に合った職場環境を選び、必要な配慮を得るための“交渉材料”でもあります。書類提出や求人選定の場面で適切に使うことで、転職活動そのものがより自分らしく、安心できるプロセスに変わっていきます。

「使わないと損」な求人・制度・支援一覧

活用対象	内容	対象者	得られるメリット	見落としがちなポイント
障害者枠求人	配慮前提の求人／勤務形態に柔軟性あり	手帳所持者	面接段階から配慮あり／負担軽減	求人内容に具体性があるかを確認
就労移行支援	転職準備・訓練・就労後のサポート	就労に不安のある人	継続就労の可能性が高まる	相談→体験→通所と段階的に進む
障害者職業センター	職業評価・アセスメント提供	自分の特性が言語化しづらい人	面接での自己説明がしやすくなる	利用には申請が必要な場合も
助成金制度	雇用開始時に企業側に支給	手帳所持者を雇う企業	採用しやすくなる要因に	制度の存在を企業側が知らないことも

障害者枠求人／通院配慮／助成金対象などの利点あり

精神障害者保健福祉手帳を活用することにより、転職活動において得られる具体的な利点は少なくありません。まず大きな利点の一つが、「障害者雇用枠」への応募が可能になることです。この枠での採用は、企業が合理的配慮を前提としているため、応募時から「通院配慮」「体調の波への理解」「業務負荷の調整」など、個別の事情に応じた配慮を受けやすくなります。こうした前提があることで、精神的にも安定した就職活動を進めることができます。

さらに、手帳を所持していることにより、企業が助成金を受け取れる場合があります。たとえば「特定求職者雇用開発助成金」や「トライアル雇用奨励金」などがあり、これらは企業にとっても採用の後押しとなるため、障害者手帳を持っていることで間接的に“選ばれやすくなる”というメリットもあります。また、手帳があることで就労移行支援などの公的支援を利用できるようになり、職業訓練・職場体験・職場定着支援など、段階的な就労準備が整いやすくなります。

dodaチャレンジやatGPなどのエージェントでは、こうした制度を熟知したキャリアアドバイザーが在籍しており、利用者が制度を十分に活用できるような求人紹介や応募書類のアドバイスを行っています。また、LITALICOワークスやココルポートでは、実際の職場で体験を重ねながら、自分に必要な配慮を見極めていく支援も受けられます。

このように、障害者手帳は就職活動の選択肢を増やす“鍵”であり、正しく使うことで「就職できるかもしれない」から「自分に合った働き方ができる」に変えていくことができます。

手帳を活用して“働きやすくなる”3つの転職術

精神障害者保健福祉手帳を活用することで、転職活動はただの「仕事探し」から、「自分に合った働き方探し」へと進化します。そのためには、自分の特性や希望を把握し、それを上手に活かしていく転職術が重要です。ここでは、働きやすさを実現するための3つのポイントをご紹介します。

① 自分の「得意・不得意」を伝えて職場を選ぶ

精神障害がある方にとって、働きやすい職場とは「自分の特性を受け入れてもらえる場所」であり、その第一歩が“自己理解”です。たとえば「一人で黙々と作業するのは得意だけど、人と頻繁に関わる仕事は疲れやすい」「マルチタスクは混乱しやすいけれど、ルーティンワークには集中できる」など、自分の“得意”と“苦手”を整理し、それに合った仕事を選ぶことが転職成功のカギになります。

その際に大切なのは、単に「これはできません」と伝えるのではなく、「こういう形であれば力を発揮できます」とポジティブに言い換える力です。就労移行支援事業所や転職エージェントでは、自己分析のサポートや模擬面接を通じて、この伝え方の練習を行っています。たとえば、atGPジョブトレでは、実際の職場体験を通じて自分の働き方を試しながら、支援員と一緒に「どんな職場が合うか」を言語化していくプログラムがあります。

また、manabyのようにオンライン中心の支援を提供する事業所では、自宅で自己分析やスキルトレーニングに取り組みながら、特性に合った働き方を見つけていくこともできます。このように、自分を知り、その特性に合った職場を選ぶことこそが、「長く、安心して働く」ことにつながります。障害者手帳を活用することで、自分の特性を受け入れてくれる企業に出会う確率が高まり、自信を持って職場選びができるようになります。

得意・不得意」を伝えて職場選びを成功させる整理シート

自分の特性	得意なこと	苦手なこと	配慮してほしい点	合いそうな職場
感覚過敏あり	一人作業に集中	大きな音／光に敏感	静かな環境／明るさ調整	在宅ワーク／特例子会社
書くことが得意／話すのが苦手	文章によるやり取り	電話・雑談対応	メール中心の業務	事務／データ入力職
状況判断に時間がかかる	ルーチン作業が得意	即判断・即返答が苦手	ゆっくり進められる業務	事務補助／軽作業

障害内容を軸に業務内容や環境を整理

自分に合った職場を見つけるためには、まず「障害の内容」と「働くうえでの特性」を軸に、業務内容や職場環境を整理することが欠かせません。たとえば、精神障害や発達障害のある方の場合、「疲れやすい」「刺激に敏感」「複数の指示を一度に理解するのが苦手」など、それぞれに異なる特性があります。こうした特性に応じて、「どんな仕事が合うか」「どんな働き方なら続けやすいか」を明確にすることで、ミスマッチの少ない職場選びができるようになります。

就労移行支援事業所では、このような整理を支援員と一緒に行うプログラムが組まれています。たとえば、LITALICOワークスやココルポートでは、個別のアセスメントを通じて「自分がどんな環境で落ち着いて働けるか」「どのような業務なら無理なくこなせるか」といったことを細かく分析する支援が充実しています。

「電話対応がストレスになる」「体調の波があるため午後からの勤務が望ましい」「静かな作業環境が必要」など、業務や環境に対する自分の希望を“障害内容と結びつけて”整理することで、企業側にも納得感を持って伝えることができます。ただ単に「苦手です」と伝えるより、「こういった特性があるので、こうした工夫が必要です」と言えることが、配慮を引き出すうえでも大きなポイントとなります。

② 配慮してもらいたいポイントを明文化しておく

転職活動や就労の場面では、「配慮してほしいこと」を曖昧なままにしてしまうと、企業側との認識にズレが生じたり、期待した支援が得られなかったりすることがあります。そうならないためにも、自分が必要とする配慮をあらかじめ「見える形＝文書」でまとめておくことが非常に重要です。

このとき役に立つのが「配慮事項シート」や「合理的配慮希望リスト」といったツールです。たとえば、就労移行支援事業所のmanabyやキズキビジネスカレッジでは、支援員と一緒に必要な配慮を洗い出し、どのように伝えれば企業側に理解されやすいかを練習する機会が設けられています。

配慮内容には、「静かな作業スペースで働きたい」「上司からの指示は口頭よりも書面がよい」「週に一度は通院のため午後休を取りたい」など、具体的な行動レベルで示すことが求められます。そしてそのうえで、「こうした配慮があると、自分は安定して仕事ができます」と、働く意欲や責任感を示す姿勢も大切です。

また、これらの情報は面接時だけでなく、雇用契約書への反映や就職後の定着支援にもつながるため、「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも非常に有効です。配慮をお願いすることは決して“甘え”ではなく、長く安定して働くための正当な準備であると捉え、自信を持って整理し伝えましょう。支援機関を活用すれば、適切な言葉選びや伝えるタイミングもサポートしてくれるため、一人で抱え込まずに準備を進めていくことが大切です。

配慮希望を“伝わる形”に整えるチェック表

配慮項目	状況の具体例	伝える理由	調整してほしい内容	一言で伝える例
通院頻度	週1で午前に病院通いあり	継続治療のため勤務調整が必要	その日は午後出勤 or 休み希望	「週1で午前中に通院があります」
体調変動	月数回、集中力が落ちる日あり	無理せず勤務継続したい	業務量や時間の一時調整	「体調に波があり、調整いただけると助かります」
環境配慮	音に敏感で集中しづらい	職場環境によって作業効率が変わる	静かなスペース／席配置の調整	「静かな場所で作業できると集中しやすいです」

「言いづらい」ではなく「伝える」がカギ

精神障害や発達障害のある方が転職活動をする際、最も多く寄せられる悩みの一つが「配慮をお願いしたいけれど、言いづらい」という気持ちです。しかし、働きやすさを実現するうえで重要なのは、「遠慮せずに伝えること」です。職場で必要な配慮がなされないまま働き始めてしまうと、ちょっとしたストレスが積み重なり、最終的には体調を崩したり、早期離職につながってしまうこともあります。

「配慮をお願いする＝わがまま」ではなく、「働き続けるために必要な環境条件を伝える」ことは、むしろ企業にとってもメリットのある行為です。たとえば、「感覚過敏があるため静かな場所での作業が望ましい」「通院があるため週に一度、午後休が必要」といった内容は、あらかじめ共有されていれば職場側も対応しやすくなります。

就労移行支援事業所では、こうした“言いづらさ”を乗り越えるための訓練も行われています。キズキビジネスカレッジやLITALICOワークスでは、配慮事項の伝え方をロールプレイ形式で練習し、自信を持って面接に臨めるようサポートしています。言いづらいことこそ、準備を重ねて“自然に伝える力”をつけておくことが大切です。

③ 面接で“配慮されたい理由”を伝える方法

面接は「自分を売り込む場」であると同時に、「働くうえで必要なことを伝える場」でもあります。精神障害や発達障害がある方にとって、ただ「配慮してほしい」と言うだけではなく、「なぜそれが必要なのか」「どのようにすれば業務が安定するのか」をセットで伝えることが、企業側の納得感を得るための鍵になります。

配慮をお願いする際は、理由を具体的かつ前向きに伝えることがポイントです。たとえば「通院で毎週火曜の午前は休みたい」ではなく、「月に一度の通院があり、火曜の午前に休みをいただければ、以後は安定して業務に取り組めます」と伝えることで、企業側もその配慮が業務全体に与える影響を理解しやすくなります。

面接で“配慮されたい理由”を納得感をもって伝える構成

面接で配慮を求める場合、以下の3つのステップで伝えると、相手に納得してもらいやすくなります。

1. **自分の特性を簡潔に説明する**
「私は精神疾患の影響で、過度な刺激や音に敏感になることがあります」など、自己理解を前提に話すことで、相手に信頼感を与えます。

2. **過去の経験に基づいた具体的な困難と工夫を示す**
「以前の職場では、オープンスペースで集中できずに作業効率が下がったため、イヤーマフを使うなどの工夫をしていました」といった形で、単なるお願いではなく“自分なりの努力”を伝えます。

3. **配慮を受けた場合にどう安定して働けるかを伝える**
「静かなスペースを確保していただけると、落ち着いて作業でき、安定して業務に取り組めます」など、配慮の効果と前向きな姿勢をセットで伝えましょう。

このように構成を意識して伝えることで、企業側にも「この人は自分の状態を理解し、安定して働くための準備ができている」と伝わりやすくなります。支援事業所のサポートを受けながら、模擬面接や言葉選びの練習を重ねることで、必要な配慮を自信をもって伝える力が身についていきます。

「伝える勇気」は、働きやすさへの第一歩です。制度や支援を活かして、自分らしい就職を目指しましょう。

構成パーツ	内容例	ポイント
①自己理解の説明	「私は音や人の声に敏感で、集中が途切れやすい特性があります」	単に「苦手」ではなく、“特性”として説明
②働く意欲の提示	「ただし、一人で集中する作業は得意で、書類作成などで力を発揮できます」	苦手の裏にある強みをセットで話す
③具体的な配慮希望	「そのため、作業環境における静かなスペースの配慮をお願いしたいです」	配慮内容は具体的に＆現実的に

単なるお願いでなく「働くために必要な工夫」として伝える

企業に配慮を求める際、重要なのは「お願い」だけで終わらせず、それが「働くために必要な前提条件」であることを説明する姿勢です。つまり、「配慮してもらえれば助かる」のではなく、「配慮があることで安定して働ける」と伝えることが、納得感のあるやり取りにつながります。この視点を持つことで、企業側も理解しやすくなり、建設的な関係性を築くきっかけになります。

たとえば、「電話応対が苦手なので別の業務を希望します」ではなく、「聴覚過敏の傾向があり、電話応対ではパフォーマンスが落ちやすいため、文書業務などに集中できる環境の方が力を発揮できます」と伝えることで、「配慮＝業務を制限する」ではなく「配慮＝能力を発揮できる工夫」として受け取ってもらえる可能性が高まります。

このような伝え方は、就労移行支援事業所の面接練習などでも重点的にトレーニングされており、LITALICOワークスやmanabyでは、こうした「伝え方の型」を支援員と一緒に習得していく仕組みが整っています。自分の障害や特性に配慮してもらうことは、けっして甘えではなく、能力を活かすための前向きな対話なのです。

履歴書・職務経歴書にも一工夫｜手帳を活かす書類作成のコツ

就職活動において重要な役割を果たすのが、履歴書や職務経歴書などの応募書類です。障害者手帳を活用して働く場合、書類の中でも特に「どのような配慮が必要なのか」と「自分にできること」のバランスを意識して記載することが大切です。これにより、企業側に安心感を与え、自分の強みを的確に伝えることができます。

特に精神障害や発達障害のある方は、「過去の職場でなぜうまくいかなかったか」「どんな工夫で改善されたか」なども書類に盛り込むことで、自己理解の深さと働く意欲をアピールできます。手帳を活用して配慮を受けたい場合も、「どんな支援があれば業務に集中できるか」という視点を持って書くことがポイントです。

職務経歴書には「できること」「配慮希望」を両立させて書く

職務経歴書では、業務経験やスキルを記載することが基本ですが、障害者手帳を持っている方は「配慮を希望するポイント」についても触れておくと、選考後のミスマッチを防ぐことができます。ここで大切なのは、「自分ができること」と「配慮してほしいこと」をセットで伝えることです。

たとえば、「Word・Excelを使用した文書作成に慣れており、正確性を重視したデータ入力作業を得意としています。作業に集中するため、静かな環境をご配慮いただけるとより力を発揮できます」と記載すれば、企業は「この人には強みがあり、環境次第で活躍できる」と判断しやすくなります。

また、「通院のため、月に一度の午前休を希望しますが、それ以外は安定して勤務可能です」など、配慮の内容に加えて業務への影響や自分の対処法を明記することで、企業側も安心して検討できる材料になります。これは「配慮を求める」のではなく「働く準備ができていること」を示すメッセージでもあります。

dodaチャレンジやatGPなどの転職エージェントでは、こうした記載内容のアドバイスも行っており、書類添削の段階から配慮希望とスキルのバランスを整える支援を受けることが可能です。職務経歴書は、自分の強みと必要な配慮を伝える「働きやすさの設計図」と考え、丁寧に仕上げていきましょう。

セクション	記載内容のポイント	実例	印象を高めるコツ
業務実績	数値・結果で強みを見せる	「事務職として月100件の処理をミスなく対応」	定量化で信頼性UP
得意分野	強みと特性を絡める	「マルチタスクより、コツコツ型作業に集中力を発揮」	特性が“強み”になる表現を
配慮希望	働き続けるための必要条件を明記	「静かな作業環境、定期的な面談があると安定しやすい」	“職場に貢献したい”意図を添える

履歴書での記載例と、書かない場合の配慮ポイント

状況	記載する場合	記載しない場合	補足・工夫ポイント
メリット	配慮の必要性を事前に伝えられる	書類選考で“中立的”な判断を受けられる	両方のメリットを理解して選択を
書き方	「精神障害者保健福祉手帳（3級）所持、通院中」	特に記載せず、口頭で説明予定	備考欄 or 別紙メモとして添える方法も可
注意点	書く内容の具体性が大切（通院頻度・症状の安定性など）	面接時に突然伝えると混乱を招く場合あり	職務経歴書で補足する方法も有効

就職活動中に利用できる制度や支援と連携する方法

精神障害や発達障害のある方が就職活動を行う際、「すぐに働かなければ」「空白期間を作りたくない」と焦る気持ちになることも多いですが、その焦りがかえって状態を悪化させてしまう場合もあります。そうしたときにこそ活用したいのが、公的制度や支援サービスです。たとえば、前職で健康保険に加入していた場合には「傷病手当金」が受け取れる可能性があり、この制度を利用することで、生活費の不安をやわらげながら、無理のないペースで就職活動を進めることが可能になります。

また、ハローワークの障害者窓口や、就労移行支援事業所などでは、履歴書作成、模擬面接、職場体験など、幅広い支援を受けることができます。さらに、民間の転職エージェントであるdodaチャレンジやatGPを併用することで、希望に沿った求人紹介だけでなく、面接の調整や配慮事項の事前共有など、細やかなサポートも得られます。

就職活動は「自分に合った働き方を探す」プロセスであり、決して急ぐべきものではありません。利用できる制度と支援を把握し、自分に合ったタイミングとステップで進めていくことが、安定した就労への近道になります。

傷病手当金を活用して、焦らず転職を考える時間を確保

就職や転職を考える際、収入が途絶えることへの不安は非常に大きなものです。特に精神的な不調で退職に至った場合、「しばらく休みたいが、生活費が心配で焦ってしまう」という声もよく聞かれます。こうしたケースで活用できるのが、「傷病手当金」という制度です。これは、会社を休職・退職後も健康保険に加入していた期間が一定以上あれば、医師の診断書をもとに最長1年6か月間、収入の約3分の2相当が支給される制度です。

傷病手当金を受け取りながら、安心して転職活動を整える流れ

まず傷病手当金を受け取るためには、会社の健康保険に継続して加入していたことと、「労務不能」であることが医師によって証明されている必要があります。休職中に申請するのが一般的ですが、退職後も要件を満たせば支給が継続されるケースもあります。そのため、精神的な不調で退職を考えている段階で、医師や保険組合に相談しておくことが大切です。

手当金を受給している期間は、「生活費のためにすぐに働かなければ」といったプレッシャーから解放され、自分の体調や希望条件を見直す時間を確保できます。このタイミングで、就労移行支援事業所に通所して生活リズムを整えたり、支援員と一緒にキャリアの棚卸しや自己分析を進めたりすることで、「次こそは長く働ける仕事に就こう」と前向きな気持ちで準備ができます。

たとえばmanabyでは、自宅からオンラインで通所できる仕組みもあるため、外出が難しい時期でも安心してスキルアップや就職準備が可能です。また、LITALICOワークスやミラトレなどの事業所では、職業訓練を受けながら傷病手当金と併用して転職活動を進めている方も少なくありません。

制度を活用し、焦らずに自分のペースで転職活動を整えることは、結果的に自分に合った職場と出会うための近道になります。まずは、利用できる支援や制度を知ることから始めましょう。必要であれば支援事業所やエージェントと相談しながら、「制度を使いながら休む」「準備する」「選ぶ」という3ステップで進めていくことが大切です。

ステップ	やること	ポイント	メリット
1.医師に相談	診断書を取得	働けない状態であることの証明	支給対象かどうかの判断材料
2.申請書提出	健保組合に必要書類を郵送	会社への報告と並行して行う	最長1年6ヶ月の金銭的サポート
3.療養と転職準備	支給を受けながら休養・支援相談	焦らず次の職場選びに向き合える	心身のリカバリーに集中できる

障害年金を受け取りながら、働き方を再設計するケースも

精神障害や発達障害を抱えながら働く場合、生活と就労の両立には大きなエネルギーが必要です。そのため、いったん就労を離れて療養に専念したり、働き方を見直したりする際に、障害年金を受給しながら「無理のない再スタート」を選ぶ人も増えています。障害年金は、働けない状態にある方を支える公的な制度ですが、必ずしも「完全に働けない状態」でなければならないというわけではありません。適切な手続きと収入調整を行えば、年金を受け取りながら段階的に働くことも可能です。

障害年金を受けながら就労の準備を進めることで、焦らずに自分に合った働き方を模索できるだけでなく、就労移行支援事業所やハローワーク、福祉機関と連携したサポートを受けやすくなります。また、年金を受けていることにより、生活の安定が得られるため、「今の自分の状態に合わせて働き方を再構築する」という発想で転職活動を進めることができます。

障害年金と就労の両立を考えた“再設計のステップ”

障害年金を受給しながら就労を目指す場合、大切なのは「いきなりフルタイムで働く」のではなく、段階的に仕事に慣れていく計画を立てることです。まずは体調や生活リズムを安定させるところからスタートし、次に「できること」や「必要な配慮」を明確にしていきます。この段階で活用したいのが、manabyやキズキビジネスカレッジ、ミラトレなどの就労移行支援事業所です。それぞれの特性に応じた支援プログラムがあり、無理なく再スタートを切る環境が整えられています。

次に、短時間勤務や在宅勤務といった柔軟な働き方を選びながら、実際の業務に徐々に慣れていくことで、働く自信や自己理解も深まります。特例子会社や障害者雇用枠では、こうした段階的な復職に理解のある企業も多く、職場定着支援を通じて長く働ける環境づくりが進められています。

ただし、障害年金と就労を両立させる場合には、「収入の上限」や「就労状況の報告義務」など、制度上の注意点があります。就労時間や収入が一定以上になると、年金の支給額が調整されたり、停止となるケースもあるため、ハローワークや年金事務所、障害者就業・生活支援センターなどの専門機関と連携し、事前に確認しておくことが重要です。

このように、障害年金を活用しながら、時間をかけて“自分らしい働き方”を再設計することは、決して消極的な選択ではありません。むしろ、自分の状態を正しく把握し、持続可能なキャリアを築くための前向きなプロセスなのです。制度の力を借りながら、自分にとって無理のない“働く形”をじっくりと整えていきましょう。

ステップ	状況	活用できる制度	工夫したこと	結果
休職中	働けないが生活費が不安	障害年金（精神2級）	医師に等級の妥当性を相談	申請通過で安心感が得られた
再始動前	働きたいが体調に不安あり	年金＋短時間勤務	通勤日数を減らす／在宅勤務併用	継続就労が可能に
転職時	手帳活用し障害者雇用枠へ	障害者枠＋年金継続	勤務収入と年金のバランス調整	安定収入と働きやすさを両立

就労支援事業所や支援員と連携して「伝え方」を整える

精神障害や発達障害のある方が就職活動を進めるうえで、「自分の特性や配慮してほしいことをどう伝えたらいいのか」が大きな壁になることがあります。特に面接や書類作成、職場とのやり取りなどでは、自分の考えを整理して相手に伝えるスキルが必要です。そこで重要になるのが、就労移行支援事業所や支援員との連携です。彼らは、就職活動のプロとして、利用者の特性を理解しながら、伝え方や言葉選び、タイミングまで細やかにサポートしてくれます。

支援員と一緒に「どこで何を伝えるべきか」をあらかじめ整理しておくことで、自分一人では気づかなかった伝達のズレや、誤解を生まない言い方に気づくことができます。たとえば、面接時に配慮事項を伝えるときも、「苦手なこと」をそのまま話すのではなく、「こうすれば力を発揮できます」という前向きな表現に言い換えることで、企業側の印象も変わってきます。

manabyやキズキビジネスカレッジ、LITALICOワークスなどでは、支援員が面接練習や自己PRの添削、履歴書のアドバイスを通じて、“伝える力”を高めるサポートをしています。特に対人コミュニケーションに不安がある方にとって、日々のやりとりの中で“伝える訓練”を重ねることが、実際の選考にも大きな自信につながります。

支援員と連携して“伝え方”を整える場面別チェック表

就職活動の中で、自分の状況や希望を「誰に・いつ・どのように伝えるか」は非常に重要です。以下のような場面別に、支援員と一緒にチェック・準備を進めることで、スムーズな就職活動が可能になります。

場面	よくある不安	支援員ができること	利用者がやること	伝えるときのコツ
面接準備	配慮の伝え方が不安	面接練習で想定質問を確認	回答の型をメモして繰り返す	「必要理由＋協力意志」のセットで話す
履歴書記載	何を書けばいいかわからない	記載例や言葉選びをサポート	自分の言葉で表現し直す	書きすぎず、整理して一言で伝える
配属面談	何を伝えるか迷う	事前に配慮内容を一緒に整理	優先順位をつけて話す	配慮だけでなく、できることも伝える

働きずらさを感じている人におすすめの転職サービス

dodaチャレンジ｜ストレスを減らせる環境を一緒に考えてくれる

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LITALICOワークス｜働く前に心の準備ができる就労支援

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ランスタッド｜大手だから安心して相談できる環境がある

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atGP｜理解ある職場紹介で再出発を後押ししてくれる

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ミラトレ｜小さな練習から始められる就労移行支援サービス

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【まとめ】障害者手帳転職活用方法｜“使う”ことで働き方は変えられる

障害者手帳は、単に制度上の証明書ではなく、自分らしい働き方を選び、安定した就労を実現するための大切な「ツール」です。精神障害や発達障害がある方にとって、就職・転職活動は不安の多いものかもしれません。しかし、障害者手帳を活用することで、配慮のある職場との出会いや、制度・支援の利用による安心感が得られます。これは「不利になる」のではなく、「必要な準備を整える」ことに他なりません。

求人選びの段階では、手帳を活用することで通院配慮、勤務時間の調整、静かな環境など、自分に合った職場を選ぶ視点が生まれます。また、就労移行支援事業所や転職エージェントと連携することで、配慮事項の整理や書類・面接対応に至るまで具体的なサポートが受けられます。傷病手当金や障害年金など、就労を焦らずに進めるための制度も活用すれば、生活の不安を抑えながら未来を見つめる時間を確保できます。

大切なのは、「障害があるから働けない」と思い込むのではなく、「どんな配慮があれば働けるか」を見極め、必要なことを適切に伝える力を育てていくことです。そのための準備と支援を重ねていけば、自分にとって心地よい働き方を実現することは十分に可能です。障害者手帳を“正しく使う”ことで、働く選択肢は広がり、自分らしく生きる力にもつながっていきます。焦らず、自分のペースで、制度と支援を味方にしながら一歩ずつ前へ進んでいきましょう。

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